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ロシアの軍事侵攻と戦争プロパガンダと今できそうな事

2022年3月29日

 

プロパガンダとは

私が学生時代、ふと本屋で立ち読みし、数分もたたないうちに購入していた本に『戦争プロパガンダ10の法則』(著:Anne Morelli)がある。

当時、私がこの本の購入を即決した理由は「戦争プロパガンダに対しての知識がなければ、簡単に口車にのせられてしまいそうな恐怖を感じたから」だ。

ここで一つ皆様に質問したい。
「敵国Aが日本に攻撃を仕掛けようとしています。以前から敵国AはA国に住む日本人に対し、〇〇のような非道な行為をしてきたという事実があります。このままでは自国が、日本に住む国民の命が危険にさらされます。」
というニュース、演説を聞いたとしよう。この時、あなたはどのように感じ、考えますか。「戦わなければやられる」と考えるのも、「今一度、対話をすべきだ。武力解決をしてはいけない。」と考えるのも、「日本を捨ててでも家族と逃げよう」と考えるのも、「よく分からないから周りに合わせる」のも自由。何か明確な正解があるわけではないだろう。ただ私が気にしているのはこの一点だ、「ああ、このニュースは典型的なプロパガンダだな」と気が付けたかどうかだ。

 

本を買う前の私と同じように、そもそも戦争プロパガンダを知らない方もおられると思うので、この記事ではまず例を交えつつ戦争プロパガンダについて説明したい。そして、それを踏まえたうえで、軍事侵攻直後のロシアの発言についてみていきたい。

まずプロパガンダとは「意図をもって、特定の主義や思想に誘導する宣伝戦略のこと」1)であり、特に戦争プロパガンダとなると、自身を正当化し、民衆や諸外国からの支持を得たりするためにも使われる。

分かりやすい例として第二次世界大戦直前のヒトラーがイギリス外相へ送った文章の中に以下のような文がある。

「(ポーランドのドイツ系住民に対する行為は)野蛮かつ制裁に値する不当なものである。ポーランドにおいてドイツ系住民の多くは被害を受け、強制連行されたうえ、非常に残虐な手段で殺されるものも出ている。この状況は、主権国家として容認しがたいものである。かくしてこれまで中立的な立場をとってきた我国ドイツも正当な利権を守るため、必要な措置を取らざるを得なくなった」2)

つまりヒトラーの主張は「あくまでも、同胞が被害を受け、その仲間を守るために何らなの手段をとらなければならなかった。(それが戦争という手段だった)」ということである。

また同じくヒトラーが国会で以下のように発言している。

「(元々ドイツの一部だった町や海をポーランドに奪われ、ポーランド国内でドイツ系住民が迫害を受けており、そのうえ、ついに)ポーランドは国家総動員令を発した。テロリズムの再燃である。私は、彼らに対抗するため、彼らと同様の手段でこれに応えることを決断した。」2)

言い換えるなら「敵側(ポーランド側)が戦争を望み、仕掛けてきた。戦争が起こった責任はポーランドにある」と言って差し支えないだろう。

繰り返しになるが、このように自身を正当化し、周りからの支持を得るための戦略的に思想を植え付ける宣伝がプロパガンダである。

なお、例にヒトラーを挙げたが、別にドイツだけがプロパガンダを行ってきたわけではない。日独伊英米仏ソ、その他多くの国や機関がプロパガンダ的発言を行ってきたことは忘れてはならない。上の発言はあくまでも一例であると念押ししておく。

 

安保理緊急会合の発言とプロパガンダ

2022/2/24、ロシアがウクライナ軍に軍事侵攻した。その直後に開かれた安保理緊急会合の要約を、国連担当の朝日新聞記者である藤原学思氏がツイートされている。

要約のさらに要約になるが、「我々ロシアは平和と安全を保障する方法を提示したのにもかかわらず、ウクライナはそれを拒んだ。ロシアはウクライナからジェノサイドを受けている人を保護することが目的で特別作戦を実行しただけである」と読み取れる。

先ほどのヒトラーの発言例を思い出してほしい。酷似していると感じた人も多いのではなかろうか。両者とも「被害者を守るべく仕方なく行動した。戦闘は相手の選択のせいでやむを得ず発生した」と言える内容である。

これこそまさしく戦争プロパガンダと言える発言だ。もしプロパガンダととれる発言を聞いたときには、この発言の何が真実で、なにを信頼してよいか、また実際は何が行われているのかを一度考えてみてほしい。前のヒトラーの例のように事実ではない発言が含まれている場合も大いにあるだろう。

※今回、朝日新聞記者である藤原学思氏の要約を信頼する形で上の文章を書いた。藤原学思氏を疑うわけではないが、私自身が直接、安保理会合を聞いたわけでもないため、ロシアの発言内容の正確性を保証できないことは断っておく。

最後に

戦争の当事者、ロシアとウクライナ以外にも多くの国々も今回の戦争の影響を大きく受けるだろう。

それぞれの国が自国の権利や国民を守るべく、更には新たな権利を獲得すべく、様々な行動に出るだろう。おそらくロシアのみならず、様々な国が自分の立場を表明し、行動に出る。ウクライナに軍事支援をする国、経済的な支援をする国、ロシアを非難したくても避難できない国、中にはロシアを応援する国も出てくるだろう。

そんな中、もしプロパガンダについて少しでも知識があれば、発言だけに騙されずに各国の行動や思惑を見抜けるかもしれない。ここまで読んでくださった方なら戦争プロパガンダなるものがあって、そういった戦略的発言があることも理解してくださったと思う。知識があれば引いた立場で冷静に情報を見れるのではなかろうか。特に昨今のような混乱した情勢の中であれば、まずは少しでも正確に情報を得て、少しでも正確に考えることが大切なのではなかろうか。それこそが今の我々にできる第一歩だと私は考えている。

あとがき

ウクライナからは遠く離れた地にいる一市民の私にどれだけ何ができるかは分かりませんが、わずかながらにでも何かの力になれればと考え、この記事を急ぎで執筆しました。今まで政治色の強い投稿や発言は控えてきたので、急な発言に驚かれている方がいれば申し訳ございません。善人ぶるつもりはございませんが、少しでも早く平和的解決がなされることを祈るばかりです。

なお、最後に断りを入れておきますが、プロパガンダはこの程度の文量で説明できるほど単純なものではありません。ほんの断片を紹介しただけでしかないので、もし興味が沸いた方がいればこれを機会に色々調べてい頂けますと幸いです。
また、私はこういった分野の専門家でなければ、専攻した経験もありません。読んでくださった方の中には「そんなことすでに知ってる」という方も多いと思います。もし、これをきっかけに知ってくださってきちんと学びたいと思ってくださった方は入門書なり、専門書なりに目を通していただければと思います。

文・みえっぱりな京都人bot中の人1号

参考文献

1)”プロパガンダとは何?”. Weblio辞書. https://www.weblio.jp/content/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%80

2)Anne Morelli著, 永田千奈訳 『戦争プロパガンダ10の法則』,株式会社草思社

追記

本記事の導入、参考に用いた文献、『戦争プロパガンダ10の法則』のリンクを付けておきます。史実に基いた例をしっかり出して検証、説明している名著であり、おすすめです。私が入門の際に最初に読み、非常に理解やすかった本でもあります。本記事で戦争プロパガンダに興味が沸いた方はぜひ一度お読みください。